事業者はクーリングオフできますか?

新潟県よろず支援拠点コーディネーターの五十嵐です。

特に個人事業者の方からの相談で多いものとして、「契約したばかりですからクーリングオフできないでしょうか」というご質問がございます。結論から申し上げると、個人事業者は、「事業として」契約を行った場合は、クーリングオフできません。

よく誤解されているのですが、クーリングオフとは契約後すぐであればだれでも契約を解約できるというものではありません。この制度は、事業者と消費者が契約した際に、情報量や質・交渉力に差があることから特に消費者を保護しようとして制定されたものとなります。そのため、事業を行っている個人事業者は消費者とはならならず、この制度の対象外となってしまうのです。

では、どのように個人事業者は契約をやめることができるのでしょうか。

契約とは、本来そこに書かれた内容によって当事者を拘束するためのものであり、一方的にやめることができないものとなります。そのため、民法一般においては、契約上の約束違反(債務不履行)や詐欺・脅迫・錯誤といった取り消し事由がない限り、いったん成立した契約を取りやめることはできないのが原則となります。

従前から不必要な多額のリースを個人事業主に契約させる業者が問題となっております。消費者とほぼ変わらない情報量や交渉力しか有しないような個人事業主を対象にしているため、場合によっては消費者法その他の法令を類推適用することができる場面もあります。しかし、上記のとおりの民法により対処せざるを得ないケースが多いことも事実です。そのため、その立証が難しく、なかなか訴訟に踏み込めないケースも散見されます。

最近では、無料の求人広告の掲載をうたい、一定期間が経過後に自動的に有料契約に移行する契約の相談も多く寄せられています。有料契約に移行することや具体的な契約内容について移行前にきちんと説明を行っている業者もあります。しかし、他方で何らの説明もなく申込用紙に小さい字で無料期間経過後に有料契約に移行する旨が記載されているのみであったり、説明はあっても解約の電話をしようとしたところ、いつも不在であったりする業者もあるやに聞いております。そのような場合は、断固として契約の成立を争っていることなりますが、金額によっては、争うだけの費用を支払よりは、業者へ支払った方が安上がりの場合もあります。

以上のように、個人事業者は、消費者と変わらないような状況にもかかわらず、消費者法などによって十分に保護されていないのが実態です。いったん紛争に巻き込まれてしまうと争うための費用の方が多い場合も少なくなく、泣き寝入りするケースも存在します。このような紛争に巻き込まれないためには、個人事業主は容易に契約を取りやめることができないことを肝に銘じ、「事業者」として契約する際に十分注意をすることを心掛けていただきたいと思います。

 

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