職場のハラスメント対策

新潟県よろず支援拠点コーディネーターの木村です。
今回は、誰もが気を付けなければならない「職場のハラスメント」対策についてお知らせします。

対応を間違えると、会社にとって大きな損失や対外的評価の下落、
社員のモチベーションの低下につながりますので参考にしてください。

 

Ⅰ.パワー・ハラスメント対策(令和4年4月1日より防止措置が義務化)

1)パワー・ハラスメントの定義

 

①職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、
②業務の適正な範囲を超えて、
③精神的・身体的苦痛を与える行為、および職場環境を悪化させる行為。

【客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しない。】

 

2)パワー・ハラスメントの代表的な言動等(6つの類型と該当すると考えられる例)

①身体的な攻撃(暴行・傷害)。
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)。
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)。
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)。
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと)。
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)。

 

3)パワー・ハラスメントの判断基準(上記①~⑥に対応)


業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできない。

②③
業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられる。

④⑤⑥
業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるが、何が「業務の適正な範囲」を超えるかについて、各職場で認識を揃えその範囲を明確にすることが望ましい。

 

4)パワー・ハラスメント対策

①組織の方針の作成
職場の一人一人が理解し排除意識を持つことが、真に実効性のあるものとする鍵となる。組織の方針が明確になれば、問題の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、効果がより期待できるようになる。

②有効性の理解
企業の存続・発展、職場の士気や生産性、企業イメージ、コンプライアンス等の観点から、対策の有効性を認識する。人材流出防止にも有効であることを理解する。

③指導の必要性
上司の指導を妨げたり、臆病になったりすることがないようにする。上司は自らの職位・責任に応じて権限を発揮し、上司としての役割を遂行することが求められる。

 

5)パワー・ハラスメントの具体的な対策

①トップのメッセージ
組織のトップが、職場のパワー・ハラスメントは職場から無くすべきであることを明確に示す。また、経営幹部に対し、職場のパワー・ハラスメント対策の重要性を理解させる。

②ルールを決める
就業規則に関係(罰則)規定を設ける。あるいは労使協定を締結する。予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

③実態を把握する
従業員アンケートを実施する。匿名情報提供・相談窓口を設置する。

④教育する
パワー・ハラスメント研修を実施する。人権問題、コンプライアンス、コミュニケーション・スキル、マネジメント・スキルなどの研修を同時に行う。

⑤周知する
組織の方針や取組について、周知・啓発を実施する。それらの研修や相談窓口の担当者を養成する。

⑥相談や解決の場を設置する
企業内・外に相談窓口を設置する。対応責任者を決める。外部専門家と連携する(産業カウンセラー等)。また、双方の人格やプライバシーに配慮しながら慎重に対応する。

⑦再発を防止する
行為者に対する再発防止研修を行う。ケース・スタディー等によりパワハラかどうかの判断力を高める。行政の相談・あっせんなど外部機関を活用する。

 

Ⅱ.セクシュアル・ハラスメント

 

1)セクシュアル・ハラスメントの種類

①対価型
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的にみて不利益な配置転換、などの不利益を受けること。

②環境型
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

 

2)セクシュアル・ハラスメントの具体例

①性的な内容の発言

〇性的な関心、欲求に基づくもの

・スリーサイズを聞くなど、身体的特徴を話題にすること。
・聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと。
・体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」、「もう更年期か」などと言うこと。
・性的な経験や性生活を話したり、質問したりすること。
・性的な噂を立てたり(流布)、性的なからかいの対象とすること。
・結婚、体型、容姿、服装などに関する発言。

〇性別による差別意識によるもの

・「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」、「女性は職場の花でありさえすればよい」などと発言すること。
・「男の子、女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと、人格を認めないような呼び方をすること。
・家族を養うのは男の役目、この仕事は女性には無理、母親は子育てに専念すべき、などの考えはセクハラの原因。

②性的な内容の行動

〇性的な関心、欲求に基づくもの

・ヌードポスター等を職場に貼ること。
・雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せ、読んだりすること。
・身体を執拗に眺め回すこと。
・食事やデート、ホテルに誘うなど、個人的な交際を求めること。
・性的な内容の電話をかけたり、手紙・メールを送ったりすること。
・身体に不必要に接触すること。
・更衣室等を覗き見すること。
・カラオケでのデュエットを強要すること。
・酒席で上司側に座席を指定したり、お酌やチークダンスを強要したりすること。
・強制猥褻、公然猥褻等の行為をすること。

〇性別による差別意識によるもの

・職場で、掃除などの雑用や私用等を強要すること。
・上司が責任のある仕事を任せなかったり、教育訓練の対象から外したりすること。
・未婚・既婚の別や年齢による労務管理上の差別があること。

 

3)セクシャル・ハラスメントへの対応

①あなたがセクシュアル・ハラスメントの被害を受けたら、相手に「不快です」「やめて欲しい」など明確に意思表示をすること。

・相手は自分の言動によって、あなたが不快に思っていることに気付いていない場合があるので、相手に「不快だ」ということをはっきりと伝えることが必要。

・相手に不快だと伝えられない場合は、一人で悩まず、相談できる人がいればその人に相談すること。(友達など身近な信頼のできる人に伝えてもらうことや、グループのリーダーなどに力になってもらうことも一つの方法。)

・被害について、具体的に記録(日時・場所・相手の言動・証人・あなたの対応・気付いたことなど)しておくこと。

・セクシュアル・ハラスメントの言動を受けるのは、決してあなたが悪いからではないことを理解すること。

 

②あなたが、セクシュアル・ハラスメントをしたと言われたら、あるいは、相手があなたの言動を拒否し、または嫌がっている場合は、同じ言動を繰り返さないこと。

・セクシュアル・ハラスメントに該当するかどうかは、受け手がそれを不快に感じるかどうか。(相手が不快に思っているかどうかの認識。)

・言動が不快であるか否かについて、相手が明確な意思表示をするとは限らない。(当事者間に上下関係や力関係などがあった場合は、相手が明確な意思表示ができないため、それを同意や合意と勘違いしてはならない。)

・性的役割分担意識や「男性」「女性」に関する固定観念をなくすことが重要。

・固定観念に基づく言動(「男らしさ」や「女らしさ」のイメージの押しつけ)も相手が不快に感じればセクシュアル・ハラスメントになる。

・セクシュアル・ハラスメント的言動は、相手を対等とみなさず、女性・男性に関する固定的なイメージを強要する意識から生じる。(悪意がなくても相手に屈辱感を与え、個人の尊厳を傷つけることも該当。)

・性に関することがらを他人から強制されず、自ら決定できる権利(性的自己決定権)を脅かす言動もセクシュアル・ハラスメントになる。

・社内での言動だけではなく、職場の歓迎会などの社外での言動もセクシュアル・ハラスメントになる。(深刻な問題や被害がなくても、相手に不快感や屈辱感を与えればセクシュアル・ハラスメントになる。)

 

③あなたの周りでセクシュアル・ハラスメントの被害を受けている人を見かけたら、また、被害を受けている人から相談されたら、助けてあげること。

・見て見ぬふりをしないで、セクシュアル・ハラスメント的言動をしている人にすぐに注意をすること。

・被害を受けた人の話をよく聞いて、相談者の支えになってやること。

・被害を感じている人に「あなたにスキがあったのでは」「考えすぎ」など、被害者に問題があったような言い方は絶対にしないこと。

・加害者がセクシュアル・ハラスメントについて理解がない場合は、セクシュアル・ハラスメントについてのパンフレット等を見せることも一つの方法。

 

④あなたの周りに相談できる人がいない場合、あるいは周りの人の協力でもセクシュアル・ハラスメント行為が解消されない場合は、社内の担当部門に相談すること。

・担当者は悩みや疑問等について話を聞き、その問題の解決のために必要な援助などを行うこと。

・被害を受けた人だけではなく、被害を目撃した人や被害を与えたと言われた人、被害者から相談を受けた人など、セクシュアル・ハラスメント等に関し悩み等をもつ全ての人が相談することができる。(匿名でも相談できる。)

・担当者への相談は、直接面談によるほか、メール、電話、手紙などでもできる。(相談員専用のメールアドレスが必要。)

・秘密は厳守されるし、相談したことがあなたの不利益になることは絶対にない。

 

⑤担当部門での相談で問題が解決されなかった場合は、あなたが求めれば、会社が被害者救済のための措置を行う。

・担当窓口を通じて、会社に「セクシュアル・ハラスメント等相談・苦情申立書」を提出すること。(申立書は担当窓口で入手できる。)

・申立てを受けた場合、担当部門とその責任者は必要と判断した場合には委員会を設置し、加害者その他の関係者から話を聞きながら、事実関係の確認等を行う。

・会社は、セクシュアル・ハラスメント行為等の事実があると認めた場合は、必要に応じて、職場環境の改善や加害者に対する厳正な処分等を行う。

・加害者に対しては、就業規則の懲戒規定に基づき、懲戒解雇、出勤停止、減給、譴責、始末書等の処分を行う。

・秘密は厳守され、報復行為は絶対にさせない。

 

Ⅲ.その他の職場のハラスメント

 

1)妊娠・出産等に関するハラスメントとは

「職場※1」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者※2」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者※2」等の就業環境が害されること。

※1 「職場」…通常就業している場所以外でも、出張先や参加が強制されている宴会なども含む。

※2 「労働者」とは…正社員だけではなく、パートタイム労働者、契約社員、派遣労働者等を含む。
(派遣労働者については、派遣元、派遣先共に、妊娠・出産等に関するハラスメントやセクシュアル・ハラスメントの防止措置を講じる必要がある。)

2)妊娠・出産等に関するハラスメントの例

 ・上司に妊娠を報告したところ、「次回の契約更新はないと思え」と言われた。
・産休の取得について上司に相談したところ、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。
・育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない状況になっている。
・妊婦健診のために休暇を取得したいと上司に相談したら、「病院は休みの日に行くものだ」と相手にしてもらえなかった。
・上司から「妊婦はいつ休むかわからないから、仕事は任せられない」と雑用ばかりさせられている。
・同僚から「こんな忙しい時期に妊娠するなんて信じられない」と繰り返し言われ、精神的に落ち込み業務に支障が出ている。

 

Ⅳ.ハラスメントの法的側面

①ハラスメントの被害者は、加害者に対して人格権侵害に基づく不法行為責任(民法709条不法行為による賠償責任)を追及できるのはもちろん、ハラスメント行為と会社の業務との間に関連性が認められる場合には、会社も加害者とともに不法行為責任を負う(民法715条:使用者責任)。

②こうした関連性が認められない場合であっても、使用者には労働者が働きやすい職場環境を保つ労働契約上の付随義務があり、使用者に債務不履行責任(民法415条)を認めた判例もある。

③会社は、ハラスメント事案に対しては厳正な態度で臨むことが、法的側面からも重要である。

④損害賠償の中心相場は、50万円~100万円(内容により金額は大きく異なるが、弁護士費用も考慮)。

 

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