労働時間か否かの境目は

新潟県よろず支援拠点コーディネーターの永田です。

 

労働時間とはどこからどこまでの時間を指すのかについて、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。私も社会保険労務士としてこの件に関しては、休憩時間中の電話番や、始業時刻前の体操の時間、始業前・終業後の着替えの時間等が労働時間に当たるのか等の相談をしばしば受けています。実際の所、労働時間なのかそうではないのか判断に迷うこともよくあります。

 

実務上は個別の事案ごとに細かく見ていく必要があり、それでも確定的な判断を下せないこともあるのですが、基準となる考え方は示されています。

 

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」には労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとあり、また労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されるとの記載があります(黙示の指示は、使用者が労働するよう具体的に指示したわけではないものの、労働者が、事実上労働せざるを得ない状況におかれている場合等を言います。)。

 

また、労働時間に当たる事例として、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間が挙げられています。記載されている事例はどちらかというとわかりやすい内容で、実際にはもっと微妙な事例も多いと思いますが、仮に労働時間であるべき時間帯について賃金の支払いが無かった場合は賃金不払いの問題が発生しますのでこの件については特に注意が必要です(コラム執筆時点の賃金請求権の消滅時効は3年)。

 

事業所におけるそれぞれの時間帯について、前述のガイドラインや労働時間等に関する裁判判例等を参考にしつつ労働時間なのか否かについて確認することをお勧めします。社内での判断がつかない場合は専門家への相談も有効ですので是非ご検討ください。

 

※新潟県よろず支援拠点では、労務管理に関する相談に対応しています。

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